工具グリップの補修方法は?グリップテープ・交換・買い替えの判断

工具グリップの補修方法は?グリップテープ・交換・買い替えの判断

こんにちは、工具ラボ所長のケンです。

ペンチやニッパー、ラチェットなどを長く使っていると、「グリップがツルツルして滑る」「ゴムがベタベタする」「持ち手が破れて金属が見えてきた」といった劣化が気になってきますよね。

工具本体はまだ使えるのに、グリップだけのために買い替えるのはもったいないと感じる人も多いかなと思います。

結論から言うと、通常の非絶縁工具でグリップ表面だけが傷んでいるなら、グリップテープ、交換用ゴム、熱収縮チューブ、液体ゴムなどで補修できる場合があります。ただし、工具本体やハンドルが壊れている場合、絶縁工具の被覆が傷んだ場合は話が別です。

この記事では、工具グリップの症状を見分けながら、自分で補修できるケースと交換・買い替えを選ぶべきケースをわかりやすく整理していきます。

  • 工具グリップが劣化する原因と見分け方
  • グリップテープやゴムで補修する方法
  • 熱収縮チューブや液体ゴムを使う方法
  • 補修せず工具を交換すべき状態
目次

工具グリップ補修の基本

工具グリップを直すときは、いきなりテープを巻くのではなく、まず「グリップ表面だけの問題なのか」「工具の安全性に関わる破損なのか」を確認することが大切です。

見た目では似ていても、単なる滑りとハンドル自体の亀裂では対処法がまったく違います。補修方法を選ぶ前に、現在の状態をじっくり確認してみましょう。

日本人作業者が割れたハンマーの木柄や傷んだ工具グリップを点検している様子

工具グリップが劣化する原因

工具のグリップには、握りやすくするだけでなく、手への圧力を分散したり、汗や油による滑りを抑えたり、振動や衝撃を和らげたりする役割があります。

ペンチやニッパーなどでは、ゴムに近い感触を持つエラストマー樹脂が使われることも多く、硬さの違う材料を組み合わせた二重成型グリップもあります。

一方、手が直接触れる部分なので、どうしても年月とともに傷みます。

代表的なのは、握る動作を繰り返したことによる表面の摩耗です。最初は細かな凹凸があったグリップでも、長く使うと表面がツルツルになり、汗や油が付いた手では滑りやすくなります。

ゴムや樹脂がベタベタしてくることもあります。これは表面に付いた皮脂や油が原因の場合もありますが、高温、紫外線、汗、油、溶剤などの影響を受け、グリップ材そのものが経年劣化していることもあります。

そのほかにも、硬化、ひび割れ、剥離、グリップの回転や抜けなどが代表的な症状です。

ベタついたら、まずは汚れか素材劣化かを見分けましょう。

素材に適した方法で軽く清掃してもすぐにベタつきが戻るなら、表面の汚れではなくグリップそのものが劣化している可能性があります。

補修前には、油や汚れをできるだけ落として乾燥させることも大切です。工具の金属部にサビや汚れがある場合は、工具のサビ取り方法と防錆アイテムの選び方も参考にしてください。サイト内でも、素材に応じた清掃やサビ対策を詳しく整理しています。

劣化した工具グリップとグリップテープ、液体ゴム、熱収縮チューブを作業台に並べた様子

補修できる状態と交換すべき状態

工具グリップ補修で一番迷いやすいのが、「まだ直せるのか、それとも買い替えたほうがいいのか」という判断です。

グリップの表面だけが傷んでいて、工具本体に異常がないなら補修を検討できます。

たとえば、少し滑りやすくなった、握る部分をもう少し太くしたい、非絶縁工具の被覆が一部擦れたといった状態なら、グリップテープや熱収縮チューブなどで改善しやすいです。

反対に、グリップ全体が硬くなっている、大きくひび割れている、握ったときにグリップだけが回る、持ち手から抜けかかっている場合は、外側へテープを巻くだけでは根本的な解決になりません。

状態 判断の目安 主な対処
表面が少し滑る 補修しやすい グリップテープ
ゴム表面が摩耗 補修しやすい 熱収縮・液体ゴム
グリップが回る 交換向き 適合グリップへ交換
ゴムが大きく剥離 交換向き グリップ交換
木柄が割れている 表面補修不可 ハンドル交換
工具本体に亀裂 使用中止 修理または工具交換
絶縁被覆が破損 DIY補修不可 使用中止・交換

大事なのは、「見た目を直すこと」と「安全性を直すこと」は同じではないという点です。

割れた柄をテープで覆えば外からはきれいに見えるかもしれません。しかし、内部の強度が戻ったわけではありません。力を入れた瞬間に破損すれば、けがにつながる可能性があります。

◆工具ラボ所長のケンのワンポイントアドバイス

私なら補修前に、グリップだけを見るのではなく、柄の曲がり、亀裂、ガタつき、可動部まで一緒に確認します。「持つところが傷んだだけ」と思っていたら、本体側にも不具合が出ていたということがあるからです。少しでも構造部分に不安があるなら、無理に延命しないほうが安心ですよ。

 

工具グリップテープで補修する方法

工具グリップテープは、特別な加工をせずに取り付けられるのが魅力です。古いグリップを外さなくても使えるケースが多く、滑り止めだけでなく、太さや握り心地の調整にも使えます。

ただし、「テープなら何でもいい」というわけではありません。工具を使う環境とテープの性質を合わせることが重要です。

自己融着テープの特徴

工具グリップの簡単な補修で使いやすい候補が、自己融着タイプのテープです。

自己融着テープには、一般的な粘着テープのようにハンドルへ糊で固定するのではなく、伸ばしながら重ねて巻くことでテープ同士が密着し、一体化していくタイプがあります。日東電工も、ブチルゴム製の自己融着テープについて、伸ばしながら巻くことでテープの表裏が密着する仕組みを案内しています(出典:日東電工「自己融着テープ(1)」)。

この仕組みのメリットは、粘着剤のベタつきや糊残りを抑えやすいことです。凹凸のある柄にも追従させやすく、重ねる回数によってグリップの太さも調整できます。

ペンチ、ニッパー、プライヤー、レンチ、ラチェット、園芸工具など、さまざまな非絶縁工具で検討しやすい方法です。

一方で、テープには材質や耐熱性、耐油性、耐薬品性などの違いがあります。自動車やバイクの整備で使う工具なら、エンジンオイルやクリーナーに触れる可能性も考えて選んだほうがいいですね。

布製のグリップテープやスポーツ用のオーバーグリップも、家庭DIYの簡易補修には使える場合があります。柔らかく、巻き直しやすいのが良いところです。

ただし、布系は油や水分を吸いやすく、機械油や金属粉が多い環境では汚れやすい傾向があります。油を扱うなら、拭き取りやすい材質のほうが管理しやすいでしょう。

一般的なビニールテープは長期的なグリップ補修には注意が必要です。

温度や使用環境によって粘着剤が柔らかくなったり、巻いた部分がずれたり、糊が残ったりすることがあります。応急処置と長期補修は分けて考えてください。

グリップテープの巻き方

グリップテープをきれいに巻くコツは、巻き始める前の下準備です。

工具表面に油やグリス、皮脂、古い粘着剤が残っていると、テープが安定しません。まず乾いた布などで汚れを落とし、必要なら工具やグリップの材質に適した方法で清掃します。

強い溶剤を使えば簡単に脱脂できそうに見えますが、既存のゴムや樹脂を膨らませたり、白く変色させたり、逆にベタつかせたりする可能性があります。

最初は素材への影響が小さい方法から試し、使用する洗剤やクリーナーがグリップ材に対応しているか確認してください。

十分に乾かしたら、グリップの端から少しずつ重ねて巻いていきます。自己融着テープの場合は、製品ごとに決められた伸ばし方や重ね幅を守ることが大切です。

ペンチの持ち手に黒いグリップテープを重ねて巻き補修している手元

太くしたいからと何重にも巻けばよいわけではありません。特にペンチやニッパーは、柄が太くなりすぎると手が開きにくくなり、かえって握力が必要になります。

元のグリップと近い太さから試し、自分の手で握ったときに無理なく開閉できる程度に仕上げるのがおすすめです。

テープ補修で注意すること

テープで補修するときに見落としやすいのが、工具の機能を邪魔してしまうことです。

ペンチやニッパーにはバネ、ロック機構、落下防止用の穴などが付いている場合があります。ラチェットには切替レバーがあり、電動工具にはトリガー、通気口、正逆転スイッチなどがあります。

こうした部分までテープを巻いてしまうと、正常に操作できなくなる可能性があります。

また、階段などに貼るザラザラした滑り止めテープを工具へ流用するのもおすすめしません。摩擦は強いものの、素手で何度も握ると手が痛くなったり、作業用手袋を傷めたりする可能性があるからです。

工具のグリップには、「足で踏む滑り止め」ではなく「手で握ることを想定した材料」を選びましょう。

そして最も重要なのが、絶縁工具です。絶縁ペンチなどの損傷部分へ自己融着テープやビニールテープを巻いても、本来の絶縁性能が復元されたとは判断できません。

電気作業へ使う工具は、必ず工具メーカーの取扱説明書、安全上の注意、適用規格を確認してください。

工具グリップゴムを交換する方法

工具グリップのゴムそのものが硬化したり、回ったり、抜けかかっていたりするなら、外側にテープを巻くより交換したほうがすっきり直せることがあります。

ただし、グリップは工具ごとに形が違います。似たサイズだから入るだろうと考えず、寸法と構造を確認しましょう。

交換用グリップの選び方

工具グリップ交換では、まずメーカーと型番を確認してください。

メーカー純正の交換部品が用意されているなら、それが最初の候補になります。工具本体との寸法や材質の相性を判断しやすいためです。

汎用品を探す場合は、グリップ長、ハンドルの幅、厚さ、内径、断面形状などを確認します。

ここで気をつけたいのが、ペンチやニッパーの柄です。円筒状に見えても、実際には平たい形や楕円に近い形などがあり、単純に「直径○mm」だけで選べない場合があります。

耐油性も大切です。自動車整備や機械整備では、握るたびにオイルが付くことがあります。油によって膨張や軟化が起きる材質では、せっかく交換しても再び緩くなる可能性があります。

確認する項目 見るポイント
メーカー・型番 純正交換部品の有無
グリップ長 柄を必要な範囲まで覆えるか
内径・幅・厚さ 緩すぎたり細すぎたりしないか
断面形状 丸・楕円・平型などが合うか
材質 使用環境に適しているか
耐油・耐薬品性 油やクリーナーを使う環境に合うか
使用温度 高温になる場所で問題ないか

寸法や対応工具、使用温度などの数値は製品によって異なります。ここでの考え方はあくまで一般的な目安なので、正確な情報は各メーカー・製品の公式サイトをご確認ください。

古いグリップの外し方

差し込み式のグリップなら、古いグリップをねじるように動かしながら外せる場合があります。

固着しているからといって、力任せに引っ張るのは避けたいところです。工具が滑ったり、手をぶつけたりすることがあります。

製品によっては、グリップと柄の隙間へゴムへの影響が少ない適切なクリーナーなどを使い、少しずつ抜く方法が案内されているケースもあります。実際にHOZANでは、ゴムへの刺激が少ないクリーナーを使い、グリップをねじりながら取り外す手順が紹介されています(出典:HOZAN「グリップ交換」)。

ただし、どのクリーナーでも使えるわけではありません。ゴムや樹脂との相性が悪ければ、膨張や劣化につながります。

古いグリップを再利用しない場合、カッターなどで切って外したくなるかもしれません。しかし、刃を深く入れると金属柄を傷つけたり、自分の手を切ったりする危険があります。

絶縁工具のグリップを切開して自分で交換するのは避けてください。

表面だけでなく内部の絶縁構造まで傷つける可能性があります。絶縁被覆に損傷がある工具は、メーカーが示す安全基準に従って使用を中止してください。

新しいグリップを入れるときも、滑りを良くするために適当な油を塗るのはおすすめしません。油分が残れば、使用中にグリップが回転する原因になることがあります。

装着補助剤を使う場合は、グリップ材を傷めず、残留しにくく、メーカーが使用を認めているものを選びましょう。

熱収縮チューブで補修する方法

工具グリップをすっきり仕上げたいなら、熱収縮チューブも選択肢になります。

収縮前のチューブを柄へ通し、加熱することで縮ませて密着させる方法です。テープのような巻き目が出にくく、ハンドル全周を比較的均一に覆いやすいのが特徴です。

選ぶときは、収縮前内径、収縮後内径、収縮率、肉厚、材質、耐熱性、耐薬品性などを確認します。

収縮後の内径が大きすぎれば固定できません。一方、収縮前の内径が小さすぎれば、そもそも柄へ通せません。

また、ペンチの先端側には幅の広い部分があるため、ハンドル部分の寸法だけを見ると途中までしか通せないことがあります。どこからチューブを入れるのかまで考えて寸法を選びましょう。

施工時にはヒートガンなどで加熱しますが、熱をかければかけるほどよいわけではありません。既存のゴム部品、樹脂部品、塗装、接着部分などを過熱すると、別の場所を傷める可能性があります。

日本人作業者がヒートガンでペンチの熱収縮チューブを加熱して密着させる様子

ライターなどの直火で炙る方法は、チューブや工具を局所的に過熱しやすいため避けたほうが安心です。

特に電動工具やバッテリー周辺では、自己判断で熱を加えず、メーカーの修理方法を優先してください。

工具グリップを塗装する方法

工具グリップをきれいにしたいとき、「塗装すれば新品のようになるのでは?」と考える人もいるでしょう。

ここでは、普通の塗料で色を塗る方法と、柔軟なゴム状被膜を作る方法を分けて考えるのがポイントです。

液体ゴムで再被覆する方法

非絶縁工具の金属柄を再び覆いたい場合は、柔軟性のある液体ゴムやラバーコーティング材を使う方法があります。ラバーコーティングメーカーのPlasti Dipでも、ペンチのハンドルへゴム状の被膜を作り、握りやすさや滑りにくさを高める用途が紹介されています(出典:Plasti Dip「Rubberized Dip Coating for Pliers」)。

一般的な硬い塗膜を作る塗料を柔らかいグリップへ塗ると、握るたびにグリップが変形し、塗膜が追従できずに割れたり剥がれたりする可能性があります。

そのため、握る部分を再生したいなら、単なる着色塗料ではなく、用途に合った柔軟性のあるコーティング材を選ぶことが大切です。

施工するときは、まず浮いている古い被膜を取り除きます。次に油や汚れを除去し、十分に乾燥させます。

塗りたくない部分をマスキングし、薄く均一に被膜を作っていきます。製品によっては一度で厚く仕上げるのではなく、乾燥させながら複数回重ねる方法が指定されています。

必要な塗布回数や乾燥・硬化時間は製品によって違うため、容器やメーカー公式情報を確認してください。

液体ゴムが向いているのは、工具本体に問題がない非絶縁工具です。

ペンチなどの金属柄へ新しい握り面を作る、古い被覆を再生する、工具を識別しやすい色へ分ける、といった用途に向いています。

研磨や表面処理について詳しく知りたい場合は、研磨工具の種類とサビ落とし・仕上げの使い分けも参考にしてください。金属面へ強い研磨を行うと傷を増やすこともあるため、素材に合わせた方法を選ぶことが大切です。

ディップとスプレーの違い

液体ゴムによる工具グリップ塗装には、大きく分けてディップ方式とスプレー方式があります。

ディップ方式は、工具の柄を液体コーティング材へ直接浸す方法です。

柄の全周を覆いやすく、ペンチやニッパーのような細長いハンドルでは、巻き目のない仕上がりを作りやすいのがメリットです。

一方で、グリップ全体を浸せる深さの容器が必要です。引き上げ方によっては液だれや厚みのムラが出る場合もあります。

スプレー方式は、補修する場所の周囲をマスキングして吹き付けます。複雑な形状や部分的な補修、色分けなどに対応しやすい方法です。

ただし、周囲へ材料が飛散しやすいため養生が必要です。製品の注意事項に従い、十分に換気できる環境で作業してください。

ディップでもスプレーでも、厚く塗れば強くなるとは限りません。表面だけ乾いて内部が十分に硬化していない状態で握ると、跡が付いたり剥がれたりすることがあります。

施工後は「触って乾いている」だけで判断せず、製品が指定する硬化時間を守ってから使用しましょう。

工具別に適した補修方法

同じ「工具グリップ」でも、ペンチとハンマーと電動工具では構造が違います。そのため、補修方法も工具ごとに変える必要があります。

ここでは、よく使われる工具を例に、自分で補修しやすい部分と、無理に補修しないほうがよい部分を整理します。

ペンチやラチェットの補修

ペンチ、ニッパー、プライヤーは、工具グリップ補修の選択肢が比較的多い工具です。

シンプルな金属柄を樹脂やゴムで覆った非絶縁工具で、本体に曲がりや亀裂がないなら、自己融着テープ、交換用グリップ、熱収縮チューブ、液体ゴムなどを検討できます。

表面が少し滑るだけなら、まずグリップテープが手軽です。

グリップ全体が硬化している、抜けかかっている、握ると空回りするなら、交換用グリップのほうが向いています。

グリップが大きく剥がれて金属面から作り直したい場合は、液体ゴムによる再被覆も候補になります。

ただし、近年のペンチには複数素材を一体で成型したグリップもあります。このタイプは単純な差し込み式ではないため、元のグリップだけをきれいに交換することが難しい場合があります。

ラチェットも同様です。ソフトグリップの表面だけが傷んでいるなら補修できる可能性がありますが、ラチェット機構、切替レバー、ソケット差込角などに不具合がある場合は、グリップだけ直しても工具として正常とは言えません。

◆工具ラボ所長のケンのワンポイントアドバイス

グリップが回る工具は意外と使いにくいです。強く握った瞬間に柄だけ滑ると、手をぶつける原因にもなります。外側からテープで締め付けるより、交換可能なグリップならきちんと交換したほうが使いやすくなりますよ。

 

ハンマーやドライバーの補修

ハンマーでは、表面のグリップと柄そのものを分けて考えます。

金属や樹脂の芯材に付いているゴムグリップの表面が擦れただけで、ハンドル自体に問題がないなら、グリップテープや適合する滑り止め材で改善できる場合があります。

しかし、木柄に亀裂がある、柄が大きく欠けている、ハンマーヘッドが緩んでいる場合は、テープで補強して使い続ける状態ではありません。

打撃工具は振るたびに大きな力がかかります。柄や頭部の固定に異常があると、使用中に破損する危険があります。

割れた木柄をテープで巻いて延命するのは避けてください。

テープは表面を保持できても、木材本来の強度やヘッドの固定状態を元に戻すものではありません。適切な交換柄への交換、または工具そのものの買い替えを検討しましょう。

ドライバーも、表面の滑りを改善する程度ならグリップテープを検討できます。

一方で、ハンドルに大きな亀裂がある、軸とハンドルの間にガタがある、力をかけると軸と柄がずれるといった症状があるなら、表面だけを補修してはいけません。

ヤスリやのみの柄も同じです。柄が割れているなら、テープを何重にも巻くより、工具に適合する交換ハンドルへ交換してください。

工具の保管環境もグリップ寿命に影響します。使用後の油や水分を落とし、高温多湿や直射日光を避けて保管する基本については、工具を長持ちさせる収納とガレージ整理の方法も参考になります。

絶縁工具は補修せず交換する

工具グリップ補修の中で、特に慎重に判断してほしいのが絶縁工具です。

絶縁ペンチや絶縁ドライバーは、普通の工具へ赤や黄色のゴムを付けただけのものではありません。電気作業を想定した絶縁工具には、規格に基づいた構造や試験が設定されている製品があります。

そのため、絶縁被覆に亀裂や欠損ができた場所へ、市販のビニールテープ、自己融着テープ、熱収縮チューブ、液体ゴムなどを付けても、元の絶縁性能が復元されたとはみなせません。

これはかなり大事なところです。

「ゴムで覆われていれば電気を通しにくそうだから大丈夫」と判断するのは危険です。また、赤と黄色のグリップだから絶縁工具、ゴムが厚いから絶縁工具、と見た目だけで判断することもできません。

絶縁工具の被覆に傷、亀裂、剥離などがある場合は、活線作業に使用せず、メーカーの指示に従って交換・点検してください。KNIPEXも絶縁工具について、使用前に絶縁部の損傷を確認し、不良のある工具は廃棄するよう案内しています(出典:KNIPEX「Safety instructions for working with insulated tools」)。

電動工具についても、グリップ周辺のハウジングに亀裂がある場合は、テープで隠して使い続けないようにしてください。

インパクトドライバーやドリル、グラインダーなどは、ハンドルと本体ハウジングが一体になっているものがあります。トリガー、正逆転スイッチ、ロックボタン、冷却用通気口、バッテリー着脱部、安全装置などへテープやコーティング材が入り込むと、操作や冷却を妨げる可能性があります。

ハウジングが割れている場合や内部部品に影響がありそうな場合は、メーカー修理や部品交換を検討してください。

工具グリップ補修の判断を一言でまとめるなら、「握り心地の問題なら補修、安全性の問題なら交換」です。

表面の摩耗や滑りなら補修を検討できますが、柄、本体、絶縁構造などに異常があるなら、外側をきれいにすることより安全を優先してください。

工具グリップ補修に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 工具のベタベタグリップはテープを巻けば直せますか?

A. 一時的に握りやすくすることはできますが、まず表面の汚れなのか、ゴムや樹脂そのものの劣化なのかを確認しましょう。素材に適した方法で清掃してもベタつきが戻る場合は、グリップ材自体が劣化している可能性があります。その場合はテープで隠すより、交換用グリップへの交換や再被覆を検討したほうがすっきり直せます。

Q2. 工具グリップにはビニールテープでも大丈夫ですか?

A. 非絶縁工具の応急的な滑り止めとして使える場合はありますが、長期使用にはあまり向きません。温度や使用環境によって粘着剤が柔らかくなったり、巻いた部分がずれたりする可能性があります。長く使うなら自己融着タイプや用途に適したグリップ材を検討してください。なお、ビニールテープを巻いても絶縁工具の安全性能を復元することはできません。

Q3. 工具グリップのゴムだけ交換できますか?

A. 差し込み式など、交換可能な構造ならグリップだけ交換できる場合があります。まずメーカー名と工具の型番から純正交換部品の有無を確認してください。汎用品を使う場合は、長さ、内径、柄の幅や厚さ、断面形状、耐油性などを確認する必要があります。二重成型など一体構造のグリップは、単純に交換できないことがあります。

Q4. 工具グリップを液体ゴムで塗装してもいいですか?

A. 工具本体に異常がない非絶縁工具なら、用途に対応した液体ゴムやラバーコーティング材を使って再被覆できる場合があります。ただし、可動部、ロック機構、電動工具の通気口やスイッチなどへ材料が入らないよう注意してください。施工方法、対応素材、乾燥時間などは製品ごとに異なるため、正確な情報は公式サイトをご確認ください。

Q5. 絶縁ペンチの破れを熱収縮チューブで直せますか?

A. 活線作業へ使うことを前提とした絶縁工具の補修方法としては考えないでください。熱収縮チューブ、液体ゴム、ビニールテープ、自己融着テープなどを追加しても、本来の認証された絶縁性能が戻ったことにはなりません。被覆が損傷した絶縁工具は使用を中止し、メーカーの案内に従って交換や点検を行ってください。

まとめ:工具グリップは症状に合わせて補修方法を選びましょう。

工具グリップが少し滑る、太さを調整したいといった軽い症状なら、グリップテープが手軽です。

ゴム全体が硬化した、抜ける、回転するといった場合は、適合する交換用グリップを探したほうが長く使いやすくなります。

巻き目のない仕上がりにしたいなら熱収縮チューブ、金属柄を新しく覆いたいなら液体ゴムによる再被覆も選択肢です。

ただし、ハンマーの木柄が割れている、ドライバーのハンドルに大きな亀裂がある、工具本体が曲がっている、電動工具のハウジングが破損しているといった状態は、グリップ補修で解決する問題ではありません。

そして、絶縁工具の被覆損傷はDIYで補修せず、使用を中止するのが基本です。

「まだ使えるから直したい」という気持ちはよくわかりますが、工具は力を加えて使うものです。補修して気持ちよく使い続けられる状態なのか、それとも買い替えるべき状態なのか。見た目だけではなく、安全性まで含めて判断してください。

工具や補修材の仕様、適合寸法、使用温度、安全上の注意などは製品によって異なります。数値や施工条件はあくまで一般的な目安として考え、正確な情報は公式サイトや取扱説明書をご確認ください。

安全性に不安がある場合や、自分で判断できない破損が見つかった場合は、無理に使用を続けず、メーカー、販売店、修理業者などの専門家に相談したうえで最終的に判断してください。

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この記事を書いた人

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「ツールラボワールド」を運営している、工具ラボ所長のケンです。

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